金井浩人さんインタビュー
公開日:2025年2月4日コラム
英語のシャワーを浴び続けた10か月、見える世界が一変した!
After 10 months of immersing myself in English, my world view changed completely!
2024年配信のハリウッド制作ドラマ『SHOGUN 将軍』で世界デビューを果たした俳優・金井浩人さん。この作品は テレビ界のアカデミー賞と呼ばれる「エミー賞」(2024年度/第76回)で歴代最多の18冠を獲得、快挙を成しとげました。 カナダでの10か月間におよぶ撮影中は英語漬けだったという金井さんに、現地での英語学習経験について聞きました。
![]()
金井 浩人(かない・ひろと)
[ Profile ]
1992年生まれ、新潟県長岡市出身。高校生の頃から映画に興味を持ち始め、演技未経験ながら2012年公開の映画『この空の花~長岡花火物語~』(大林宣彦監督)で俳優デビュー。その後、本格的に俳優を目指して上京。インディペンデント作品などを経て、映画『きらきら眼鏡』(18年/犬童一利監督)に主演。NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(20年)などテレビドラマでも活躍。世界配信のドラマ『SHOGUN 将軍』(24年)では物語の重要なカギを握る役どころを演じた。
一本の映画が俳優への道を開いてくれた
学校の授業以外で英語を身近に感じたのは中学時代、母とアメリカのドラマを観るようになったのがきっかけです。『LOST』『スーパーナチュラル』『HEROES』など、SFの番組が多かったですね。そのときは英語というより、アメリカ人俳優のお芝居や作品の世界観に興味を持ったというほうが正しかったと思います。
高校に入ってから、今度は父の影響で映画にのめり込みました。洋画邦画を問わず月に20~30作品を観るうちに映画製作に興味がわき、「どういう形であれ将来は映画業界に入りたい」と思うようになっていったんです。
その願いが叶い、18歳のとき、地元・長岡で行われた映画撮影に加わることができました。"長岡花火"という有名な花火大会を題材にした映画で、「ボランティアスタッフ募集」の新聞広告を見つけて応募したところ、履歴書を見たプロデューサーさんが「キャストとして出てみませんか?」と言ってくださり、素人にもかかわらずセリフのある役をいただくことになったのです。
たった1日、1シーンの撮影でしたが、現場の雰囲気は想像をはるかに超えるものでした。まぶしいほどの照明のもと、大勢のスタッフさんが忙しく動き回り、目の前には映画やドラマでしか知らない俳優さんたちがいて、胸が躍りました。このとき、「絶対に東京へ行って俳優になる」と決心しました。
初の海外撮影 スケールの大きさに圧倒された
その後、アルバイトで資金を貯め、20歳のとき上京。2年間アクティングスクールで学んだあと、俳優活動を開始しました。『SHOGUN 将軍』のオーディションを受けたのは29歳のときです。
海外作品に関わる千載一遇のチャンスに飛びつき、3か月間の選考を経て、当時のマネージャーさんから「おめでとうございます」と台本を手渡されときは、喜びのあまり頭が真っ白になりました。手は震え、涙が止まらなかったのを覚えています。
撮影が行われたカナダ・バンクーバーに渡ると、日本では考えられないほどの巨大なセット、撮影スタッフの多さ、スケールの大きさに圧倒され、本当に驚くことばかりで常に緊張していました。でも、僕が演じる樫木央海という若い侍も、おそらく同じような状況だったはずです。彼は貧しい漁村の生まれでキャリアもなく、イギリス人航海士が日本に漂着した場面に居合わせたのがきっかけでどんどんチャンスをつかみ取り、時代に翻弄されながらも自分の生きる道を見つけ出そうとします。その日々奮闘する姿が、初の海外撮影に臨む自分と重なりました。
そうであるなら、この境遇を逆手に取って役に活かすしかない! と、その時々に感じた驚き、戸惑い、喜怒哀楽をお芝居をする時も忘れずに生かそうと常に意識していました。
英語を今後の人生に活かしたい!
撮影と並行して始めたのが英語の勉強です。役のセリフは日本語でしたが、大多数のスタッフさんが英語を話す環境にいて、英語を勉強しないなんてもったいないと思ったのです。
とは言え、現地で先生に習ったわけではありません。10か月間滞在していたコンドミニアムで、暇さえあれば日本から持ってきた単語集やリーディングの本で学習しながら、海外ドラマを流しっぱなしにして耳を慣らしました。そして、独学で覚えた英単語やフレーズを駆使して撮影現場のスタッフさんや車で送ってくれるドライバーさんに使い、反応を見ながらボキャブラリーとして定着させていったのです。
また、「このセリフを言うときの気持ちを英語で表したらどうなるか?」と考え、台本に書き込みました。仕事と英語を両立させるため、撮影の途中からは英語版の台本ももらい、試行錯誤しながら学習を進めていきました。「この経験をフルに使い、英語を今後の人生に活かしたい!」という思いが大きなモチベーションになっていました。
エミー賞の授賞式当日、インタビューでマイクを向けられ、自分は無我夢中で何を話したかよく覚えていませんが(笑)、拙いながらも公の場で英語を使って受け答えさせていただけたのはすばらしい経験でしたし、10か月の撮影期間を含め、今まであきらめずに勉強を続けてきてよかったと思いました。そして、本作が数々の賞を獲得していく中、主演を務めた真田広之さんをはじめとするキャスト、スタッフと同じ空気を吸っている奇跡をこの上なく幸せに感じました。その余韻は今も残っていますし、生涯、消えることはないと思います。
生まれた国や言語が違っても力を合わせれば すばらしいものができる
今回の『SHOGUN 将軍』を通して心に残ったのは、生まれた国や言語が違っても、力を合わせれば必ずすばらしいものができると身をもって経験できたこと。ショービジネスに限らず、世界中の人々が手を取り合って、『違い』を受け入れ、それを楽しみ、協力すればよりよい未来が築けるという希望を持ちました。また、作品が世界に配信され、大きな反響を得たことで、作品を通じて世界中の人々とつながったような喜びも感じています。
この先も国際的な作品に挑戦していきたいと思い、今は海外のマネージャーとコンタクトを取りながら、オーディションを受けているところです。
英語も毎日勉強しています。演じる役の幅を広げる意味でも、今はアメリカの発音を習得することを中心に、オンライン英会話で1回25分のレッスンを1日2、3回受けることを日課にしています。
英語で話していると、日本語を話すときより表情も豊かになり、普段なら遠慮してしまうようなことも言っている自分に気がつきます。海外出身の人たちはいい意味で個人主義で、まわりの目を気にせず自分らしく生きている人が多い印象ですが、その影響か、「自分は自分のままでいいんだ」と思えるようにもなりました。英語を学んだことで、自分という人間の違う側面も見えてきて、人生がさらに楽しくなってきました!
Message
僕は29歳で『SHOGUN 将軍』にキャスティングされ、英語の勉強を始めました。「もっと早くやっておけばよかった」というのが正直な気持ちです。みなさんはすでに英語の勉強をスタートしているのですから、そのアドバンテージを活かして、海外の人とふれあう機会をたくさん見つけてほしいと思います。そこでの楽しかった経験が増えるほど、将来の選択肢も広がっていくはずです。

0120-055-808

