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小学校の英語教育、どう変わったの?

公開日:2021年1月28日コラム

小学校の英語教育、どう変わったの?

2020年度から、小学3・4年生では外国語活動が、5・6年生では英語が教科として導入されました。英語教育の内容や評価のしかたはどう変わったのでしょうか。また、中学校の英語教科にはどのようにつながっていくのでしょうか。

英語教育の変化について、筑波大学の卯城祐司先生に聞きました。


Q1.今年度は小学校も新型コロナウイルス対応で大変です

小学校は長期間休業となって、ZoomやTeamsなどのビデオ会議ツールを使った「同期型(ライブ配信)」、オンライン上に教材や資料、音声、動画を配信する「非同期型(オンデマンド)」、そして両方の「複合型」などを試みた学校もありました。

小学校英語教育学会の報告では、市の教育委員会が地方テレビ局と連携して放送したり、ALTの先生方がビデオクリップを作成した取り組みがあったそうです。ALTの先生方は、後任が来日できないことから、帰国した先生に協力してもらい、テレビ会議システムGoogle Meetを使ってオンライン授業を行うところもあるようです。

6月以降、分散登校が始まっても、児童はソーシャルディスタンスを確保し、ペアの相手を替えながら練習しました。机の上に飛沫が飛ばないよう、新聞紙や画板の上に教科書やプリントをのせて席を移動する工夫をしているところもあったそうです。

Q2.2020年度から英語教育が大きく変わりました

2020年は、グローバル化に対応する「小・中・高の新学習指導要領」、「英語教育改革」、そして「大学入試改革」からなる教育改革の年です。学校教育では、これまでの「何を学ぶか」に加えて「何ができるようになるか」、そして「どのように学ぶか」も問われることになりました。

今年度からは小学校で、2021年度からは中学校で、そして2022年度からは年次進行で高校の新学習指導要領が実施されます。従来、小学校5・6年生で行われていた『外国語活動(英語)』は3・4年生で行われます。5・6年生では教科として英語がスタートし、「英語に慣れ親しむ」ことにとどまらず、「読む」「書く」も加わった「4技能5領域」が対象です(「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能のうち「話す」が【やりとり】と【発表】に分かれて5領域となります)。

中学校の授業は英語で行い、身近な話題について理解し、簡単な情報交換や表現ができる能力を養います。高校では、より幅広い内容について理解し、英語話者とやりとりできる能力を養います。英語で授業を進め、ディベートやプレゼンテーションなども取り入れます。

また、2020年度(2021年1月実施)から、センター試験が共通テストに変わります。英語は「リーディング」と「リスニング」の配点が同じになります。発音、アクセント、語句整序などはなくなり、要点把握、複数の情報統合など、思考力・判断力が求められます。実際のコミュニケーションを想定した明確な場面、目的、状況の中で英語を読み、聞く力が問われます。

Q3.小学校の英語は、どのように変わりましたか?

3・4年生から『外国語活動』を導入して、「聞くこと」「話すこと」を中心とした活動で外国語に慣れ親しみます。動機を高めたうえで、5・6年生から段階的に文字を「読むこと」「書くこと」を加えていきます。4つの技能を総合的・系統的に扱う学習を行うことで、中学校英語への接続を重視しています。

語彙については、600 ~ 700 語程度の習得が明記されました。学習指導要領改訂前の400前後の語と関連づけながら200 ~ 300程度の語彙を増やしていきます。

【発表】は事前に準備し、練習することも可能ですが、【やりとり】は双方向型のコミュニケーションで、しかも、その場で相手の言葉や質問にこたえるなど即興性が求められます。

教科化の影響のひとつとして、2020年春、首都圏では、140校ほどの私立中学校入試で「英語」が出題されました(6年前はわずか10数校)。対象となる志願者は2,000名を超えるそうです。

Q4.小学校英語の評価の基準を教えてください。

教科化する前の『外国語活動』では「英語に慣れ親しむ」ことが重視されていたので、数値による評価はなじみません。生徒によって特記することがあれば文章で記す程度でした。

今年度からは、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3観点を踏まえて4技能5領域を評価します。ただし、毎時間、すべてを評価するのは難しいので、単元などまとまりの中で評価をしていきます。

3・4年生の『外国語活動』では、1年間を通した評価を観点別に文章化します。活動内容は音声が主体なので、先生による観察や、ワークシート、作品などを評価していきます。

一方、5・6年生の『外国語科』では、観点別学習状況の評価をもとに評定をつけます(「十分満足できる(A)」「概ね満足(B)」「努力を要する(C)」など)。授業だけでは評価の限界があるので、学期末などにパフォーマンス評価を行います。

いわゆる評価には「育てる評価」と「記録に残す評価」があると言われます。小学校では、すべての児童を「概ね満足(B)」以上に導くことを目指しています。「努力を要する(C)」児童については、「記録に残す評価」を行う前に「概ね満足(B)」となるよう毎時間励ましていきます。なお、 通知表・通信簿のフォーマットは、学校ごとに違います。

Q5.中学校の英語学習とのつながりはどうなりますか?

5・6年生で教科化されたことで、よりスムーズに中学校でスタートできるようになることが期待できます。ただし、中学1年生の入門期では、生徒と先生が一緒に小学校で学んだ英語にふれる"橋渡し"を大切にしています。これまで以上に、小学校で学んだことと、中学校で学ぶ英語の目標や内容を互いに理解することが大切になります。

これは3・4年生の『外国語活動』から5・6年生の『外国語科』についても同じことが言えます。外国語活動の「もやもや」とした成果を理解して、いかしていくことが大事です。そのうえで、"中学校になったので、もう一度、きちんとやり直して勉強しよう"など、ゼロから始めないことが肝心です。

Q6.小学校高学年の検定教科書の傾向はどうですか?

5・6年生で教科となったことで、教科書を作る各社が、文部科学省が検定を行う教科書を作りました。その多くが、移行期間用に文部科学省が作った教材『We Can!』を参考にしているようで、構成などが似ています。小学校ではまだ、文法を教えたりはしません。中学校の教科書と比べて、イラストやリスニングの素材が多く、メッセージカード作りや【発表】【やりとり】などの活動もたくさん入っています。

Q7.最後に、これからの社会を生きていく子どもたちや保護者へ、メッセージをお願いします。

5・6年生の『外国語科』では教科として英語が教えられます。そして3・4年生は『外国語活動』で体験的に英語の理解を深めます。どちらも目的はコミュニケーション能力の育成です。子どもたちは、世界のさまざまな外国語や文化への理解を深め、英語にふれる楽しさを体感することでしょう。英語は世界への扉です。子どもたちが可能性を大きく広げ、世界に羽ばたくことを願っています。


卯城祐司(うしろ・ゆうじ)
筑波大学人文社会系(英語教育学)教授。博士(言語学)。全国英語教育学会会長(H25~H28年度)、小学校英語教育学会会長(H22~H26年度)などを歴任。文部科学省「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想(英語教育に関する研究グループ)」委員、「外国語能力の向上に関する検討会(国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策)」委員、同主催「小学校における英語活動等国際理解活動指導者養成研修」ほか、各地の教員研修の講師を務める。

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